こんにちは。税理士の北野です。
佐世保市・佐々町・松浦市・平戸市・旧北松地区を中心に、地域のできないを減らし、できるを増やす をミッションとして日々活動しています。
今回は、ドラえもんのひみつ道具を例に、税理士事務所におけるDXと税理士業務の未来予測をしてみました。
1. なぜ「ひみつ道具」か
昨今、生成AIの急速な進化により、「今の仕事は将来どうなってしまうのか」と不安を感じる事業者様も少なくないかと思います。
しかし、未来を正確に予測することは、多くの変数が絡むため、極めて困難です。
こうした状況では、あえて極端なケースを思考の先に置いてみることで、現実の課題やボトルネックが浮き彫りになることがあります。
2025年現在、クラウド会計や生成AIが広く普及しつつある今こそ、「ひみつ道具」のような非現実的なアイデアを出発点に、実際のテクノロジーと照らし合わせることで、次にどこへ投資すべきか、その判断のヒントが得られるかもしれません。
2. 12のひみつ道具 × リアル技術対応表
# | ひみつ道具 | DX で再現する視点 | いま/近未来の実装例 |
---|---|---|---|
1 | どこでもドア | 距離ゼロの面談・調査立ち会い | オンライン会議+電子契約+クラウド共有 |
2 | アンキパン | 一瞬で条文暗記 | 生成AIサマリーで暗記不要に 税理士試験は暗記から思考力重視へ |
3 | ほんやくコンニャク | 多言語決算説明 | GPT-4o等による同時通訳 |
4 | コピーロボット | 分身レビュー | RPA+AIによる一次チェック |
5 | タイムふろしき | 古い証憑の復元 | 高解像スキャン+電子帳簿保存のタイムスタンプ |
6 | スモール/ビッグライト | 書類縮小保管・拡大閲覧 | 全文検索付き PDF と 4K ディスプレイ |
7 | タケコプター | 渋滞ゼロ移動 | ドローン+空飛ぶクルマ |
8 | もしもボックス | “別世界線”シミュレーション | BIツールで多シナリオ決算シミュレーション |
9 | とりよせバッグ | 紛失伝票の瞬間収集 | 銀行・POS データ API 取寄せ自動連携 |
10 | コンピューターペンシル | 紙に触れ仕訳計算 | AI-OCR+自動仕訳 |
11 | ソノウソホント | 宣言で数字改変 | 改ざん検知 AI(異常仕訳アラート) |
12 | タイムテレビ | 過去の出来事をその場で再生 | ブロックチェーン保存の監査ログ+360°録画リプレイ |
着眼点
列挙した 12 の機能のうち、半分以上は既に SaaS・生成AIで“8 割再現”できる。残りも API 標準化とハードの進歩が進めば 2030 年には十分視野に入る。なお、現状はそれっぽいことができるだけであり、AIの精度が甘い部分も多々あるため、人間のチェックは将来的にも必須という見方も可能。
3. 2030 年までのロードマップ(現実的シナリオ)
フェーズ | ブレークスルー | 税理士業務インパクト |
---|---|---|
2025-2027 | 電子インボイスの普及 | 入力系作業の 70 % を自動化 |
2027-2030 | 自律型 AI エージェントが取引→仕訳→申告をワンストップ | 「翌日試算表」常態化、記帳代行は完全コモディティ |
2030+ | 国税・公的データの API 連携が本格化 | 納税、税理士は AI ガバナンス設計と戦略 CFO 機能へ重心移動 |
着眼点
電子インボイスはそれほど普及しないだろうというシナリオも大いに考えられる。
また、税制改正は毎年行われるため、そのアップデートの即時反映もボトルネックとなる。
さらに、領収書や請求書のデータだけ見ても適正な財務諸表の作成ができるとは言えない。(例:ボールペンの購入費用は、A社にとっては消耗品費かもしれないが、B社にとっては仕入かもしれないし、C社にとっては交際費かもしれないし、D社にとっては役員貸付金となるかもしれない。それは領収書や請求書だけを見ても分からない。)あらゆる費用の支出目的を適切な勘定科目に自動で反映させるにはどうすればよいだろうか。
4. 導入時ガバナンス 4 ポイント
- 本人性の担保
電子署名・デジタルタイムスタンプの管理フローを先に設計する(コピーロボット問題に対応)。 - ログと証跡の保全
生成 AI の出力も含め、改変不能な形で 7 年保存。 - RCM(リスクコントロールマトリクス)拡張
“もしもボックス”級のシナリオ変更は、影響範囲を RCM で即時確認できるようにする。 - スキル再定義
暗記ではなく“AI への問いの立て方”が付加価値に──アンキパンを食べるヒマがあればプロンプト設計を磨く。
5. まとめ――夢を翻訳し、今日の投資決定へ
- ひみつ道具は課題のデフォルメ
そのままは無理でも、現実技術で 何%再現できるかを測れば投資優先度が見える。 - 生成 AI は“道具寄り”から“同僚寄り”へ進化中
2025 年時点で既に取引入力・翻訳・経費精算を肩代わりし始めている。 - 2030 年は“無人決算”より“AI ガバナンス”
技術より統制がボトルネックになる。今のうちに RCM とスキルセットを更新しよう。
ドラえもんのひみつ道具を軸に検討することで、投資すべき現実技術が見えてくる。
ひみつ道具思考で、令和の税理士事務所を一歩先へ――それがバックオフィス DX の最短ルートである。
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