「死と税金だけは避けられない」
有名な言葉です。ベンジャミン・フランクリンのもの、とされています。
税に関する名言を集めていたら、面白いことに気づきました。表現は違っても、言っていることが2000年前からほとんど変わっていないのです。
政治家も、判事も、小説家も、漫画のキャラクターも、同じ壁の前で立ち止まっている。
佐世保で税理士をしている私が選んだ「税に関する名言」を15本ご紹介します。
1. 税とは何か
「この世で確実なものは、死と税金だけ」
ベンジャミン・フランクリン(1789年の書簡)
引用されるとき、たいてい省かれている前置きがあります。「新しい憲法は永続しそうに見えるが」。
制度は変わるかもしれない、でも死と税金は残る——そういう文脈でした。
事実、それから235年で憲法も税制も何度も姿を変えました。残ったのは後半の2つだけです。
「死と税金ほど確かなものはない」
ダニエル・デフォー『政治の歴史』(1726年)
『ロビンソン・クルーソー』の作者です。フランクリンの手紙より63年早い。つまり「死と税金」の元ネタは、政治家ではなく小説家の方でした。
名言は、より有名な人の名前に吸い寄せられて記憶されます。
「税金は、文明社会の対価である」
オリバー・W・ホームズ判事(米国連邦最高裁・1927年)
米国の内国歳入庁(IRS)本部の壁に、この一節が刻まれています。道路も、学校も、消防も、税で買っている、という考え方です。
裏を返せば、納税者は対価に見合うサービスを受け取る権利がある、ということでもあります。
「課税する権力は、破壊する権力である」
ジョン・マーシャル判事(米国連邦最高裁・1819年)
同じ最高裁で、100年前にはこう言われていました。州が銀行に課税できるかを争った判決の一節です。
課税が過ぎれば、対象そのものが消える。重い税負担が事業を廃業に追い込む、という警告としても読めます。
税は文明を買うのか、事業を壊すのか。最高裁の中でも、決着はついていません。
2. 取る側の論理
「ガチョウが鳴かないように、できるだけ多くの羽をむしり取る」
ジャン=バティスト・コルベール(ルイ14世の財務総監)とされる言葉
17世紀フランス、徴税の要諦を語ったものです。痛みを感じさせずに、より多く取る技術。
源泉徴収も、消費税も、社会保険料も、この思想の延長線上にあります。手取り額を見て初めて驚くのは、ある意味で設計通りなのです。
「苛政は虎よりも猛し」
孔子『礼記』檀弓
虎に家族を食われてなお、山を去らない婦人がいた。理由を尋ねると「ここには重い税がないから」と答えた——という話に由来します。
2000年以上前から、人も企業も、税の軽い場所へ動きます。国際的な租税回避も、根っこは同じです。
「美貌と才知に、税を課すべし」
ジョナサン・スウィフト『ガリヴァー旅行記』
第3篇に登場する、学者たちが大真面目に議論する架空の税制案です。美貌への課税額は本人の自己申告制。誰ひとり安く申告しなかった、というオチが付きます。
担税力をどこに見出すか、という税の本質を突いた風刺でした。
3. 政治家と税
「私の唇を読め。新しい税はない」
ジョージ・H・W・ブッシュ(1988年・大統領選)
指名受諾演説での断言でした。しかし就任後、財政赤字を前に増税へ転換します。この一言が繰り返し放送され、再選を逃しました。
「動くものには課税し、動き続ければ規制し、止まったら補助金を出す」
ロナルド・レーガン
政府の経済観を皮肉った一節。課税→規制→補助金という順番が絶妙です。
補助金の対象になる頃には、たいてい手遅れになっている、とも読めます。
「公的資金なるものは存在しない。あるのは納税者のお金だけだ」
マーガレット・サッチャー(1983年・保守党大会)
「国が出す」という言い方への反論として語られました。給付金も補助金も、原資は誰かが納めた税金です。
そう考えると、補助金の申請書一枚も、雑には書けません。
4. 物語の中の税
「真の紳士は、別れた女と、払った税金の話はしない」
村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』
この一文の直後、著者は「真っ赤な嘘だ」と語ります。さっき適当に作った、と。
実際、真の紳士は、払った税金の話はしないような気がします。
「・・・税金みてーなもんだ・・・おめーのヘマはもともと計算に入れてる」
『SLAM DUNK』流川楓のセリフより
流川おまえは納税をしたことあるのか・・・?・・・ということは置いといて。
井上雄彦は当時、納税に苦慮していたのだろうということが読み取れます。
喉が渇いた相手を、待つ
映画『マルサの女』(伊丹十三監督・1987年)
脱税者が、調査官に蓄財の心構えを説く場面があります。目の前の水をすぐ飲ませず、相手が飲みたがるまで待て、という趣旨のたとえ話です。
我慢できる者が金を持つ、という理屈。ただし裏を返せば、使わなければ事業は伸びません。
5. そして、税理士の言葉
「一円の取りすぎた税金もなく、一円の取り足らざる税金もなからしむべし」
飯塚毅(TKC創業者・税理士)
戦後、税務当局との厳しい対立を経てたどり着いた信念です。
多く納めすぎるのも、少なく済ませるのも、等しく間違いだという立場です。
納税者の味方であることと、税法の番人であること。この2つは矛盾しません。
「税金を払わずに金持ちになる方法はない」
詠み人知らず
どこかで目についた言葉(出所は不明です)。
なんとしてでも利益を残したくないという方などがいらっしゃったとき、私が、時に言うセリフでもあります。
(もちろん私は節税は賛成です。)
まとめ
集めてみて分かったのは、税をめぐる論点が驚くほど変わっていない、ということでした。
- 税は文明の対価か、事業を壊す刃か(1819年と1927年の最高裁)
- 重い税から、人は逃げる(2000年前の孔子)
- 痛みを感じさせない徴収が最も効率的(17世紀のフランス)
- 記録は、守りにも攻めにもなる(1931年のシカゴ)
制度は毎年変わります。しかし、悩みの構造は変わりません。だからこそ、その時々の制度を正確に押さえることに意味があります。
北野雄大税理士事務所では、佐世保・長崎の中小企業を対象に、税務顧問から事業承継までご相談を承っています。
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